町を歩いていると、夜の帳が静かに降り始めた。夜市へ向かうにはちょうどいい時間だった。そうして僕は寧夏夜市に足を運んだ。
夜市が開かれている通り自体には、街灯がほとんどなく、薄暗かった。それでも、煌々と明かりを灯した屋台が一列に並んでいる。その様子は、暗闇の中にぽつぽつと咲く花のようだった。光の色と熱気とが、夜の静寂を穏やかに打ち消している。
数多くの屋台の中に、たこ焼きを売る店を見つけた。もちろん、これは日本の食べ物だ。中国料理ではない。それでも、この夜市では寿司や日本風の焼き鳥も売られている。だから、たこ焼きが並んでいても不思議ではないのだろう。ここでそれが一般的な食べ物なのかどうかは分からないけれど、少なくとも僕が知らない間に、たこ焼きはしっかりと海を越え、遠い異国の地に根付いていた。
僕はその屋台のたこ焼きをじっと眺めていた。遠いところまで来ているな、とたこ焼きに向かって心の中で呟いた。
2017年6月 食べ物 台湾 | |
食べ物の屋台 市場 台北 |
No
10166
撮影年月
2016年9月
投稿日
2017年06月05日
更新日
2024年11月30日
撮影場所
台北 / 台湾
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
SONNAR T* FE 55MM F1.8 ZA