太陽は徐々に沈みつつあった。プラットホームに現れた影は濃く、そして太い。乗客たちは、濃くて太い影が占拠している中で電車が来るのを待っていた。もう夕刻だ。仕事を終えて家路に就いた人びとはちょっと疲れているようにみえる。それぞれが誰かと話すわけでもなく、無言で電車が来る瞬間を待っている。この時間に仕事モードから普段モードに切り替えているのかもしれない。聞こえてくるのは執拗に繰り返される構内アナウンスだけだった。
そのうち両隣のプラットホームを電車が通り過ぎ始めた。でも、このプラットホームにいる人たちは反応を示さない。自分が乗り込めない電車にはこれっぽっちも興味はない。自分の目的地に向かう電車が来ない限りは、意地でも動き出すつもりがないかのように皆じっとし続けている。そんなプラットホームで、僕だけがカメラを片手に落ち着きのない子どものように動き回っていた。
2019年9月 町角 東京 | |
乗客 プラットホーム 影 新橋 駅 列車 |
No
11211
撮影年月
2019年3月
投稿日
2019年09月27日
更新日
2023年10月24日
撮影場所
新橋 / 東京
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
RICOH GR III