バンコクにあるクロントゥーイ市場の一角に置かれた籠の中で生きた鶏たちが動き回っていた。でも、コケコッコーと鳴いている鶏はいない。もう昼下がりだったので、鳴き声を上げる時間ではないだのろう。鶏たちは静かに動き回っている。肉屋の前にやって来ると、籠の向こうに男がいるのが見えた。ベッドのようなものが置かれていて、その上で仰向けに寝ている。上半身裸の男は、頭の上で腕を組んでのんびりとしていた。とても仕事中の姿とは思えないくらいの寛ぎ加減だ。これでテレビでも置いてあったら、自宅のリビングで寛ぐお父さんの姿だと言われても違和感はないだろう。
状況から判断するに、この弛緩しきった男がこの肉屋の店主だ。籠の中を忙しく動き回っている鶏とは対照的に、時間を持て余している感じが波打ったお腹に滲み出っているように見える。僕が店先に立ち止まると、男は目を細く開けて僕の様子を窺っていた。でも、声を掛けてくることはなかった。見た瞬間に僕が客ではないことを理解してしまったのだろう。
2018年5月 人びと タイ | |
バンコク 籠 鶏・鶏肉 クロントゥーイ市場 リラックス 上半身裸 店主 |
No
10555
撮影年月
2017年9月
投稿日
2018年05月10日
更新日
2024年02月16日
撮影場所
バンコク / タイ
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
SONNAR T* FE 55MM F1.8 ZA