ハノイの街を歩いていると、ふと立ち止まりたくなるような食堂に出くわす。銀色に鈍く光るステンレスのテーブル。プラスチックの椅子が無造作に並び、中央には箸が束になって立てられている。どのテーブルにも共通して置かれているのは、唐辛子入りの調味料の瓶、紙ナプキン、そして赤いプラスチック製の箸入れ。
ベトナムでも食事には箸を使う。そのことに驚く日本人は少ないかもしれないが、実はこの習慣の背景には、長い歴史の影が差している。かつて中国の王朝に朝貢していたベトナムは、政治から宗教、そして食文化に至るまで、大きな影響を受けてきた。
箸で食べるという日常の動作の中に、数世紀にわたる文化の浸透が息づいている。そして、その「中国的なるもの」は、1884年の清仏戦争を境に少しずつ揺らぎ始めた。フランスの植民地支配が始まり、バゲットやカフェ・スア・ダー(練乳入りアイスコーヒー)がこの国の食卓に加わるようになるのだった。
2025年6月 町角 ベトナム | |
椅子 お箸 ハノイ レストラン テーブル |
No
12875
撮影年月
2025年3月
投稿日
2025年06月26日
撮影場所
ハノイ / ベトナム
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R V
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF