ハノイでは、学校が終わると保護者が子どもを迎えに来るのが日常の風景らしい。小さな手を握りながら、祖父母が、父母が、ぞろぞろと校門の前に集まってくる。まるで、一日の終わりに大切なものを受け取りにくる儀式のようでもあった。
この日通りかかったのは、旧市街にある小さな小学校。古びた瓦屋根と漢字の刻まれた門柱が歴史を語るその門前は、午後になるとにわかに活気を帯びてくる。バイクの音、子どもたちのはしゃぎ声、通り過ぎる人々のざわめき――あらゆる生活の音が混じり合って、ハノイの午後をつくりあげていた。
門から出てきた女の子と男の子、それぞれの手をしっかりと握っていたのは、年配の女性だった。おそらく祖母なのだろう。何気ない一コマだが、その姿にどこか安心感があった。どの家族にも、こうして「待ってくれる人」がいるのだという事実が、街全体に温もりを与えている。
日本と違って、子どもだけで帰るのはきっと禁止されているのだろう。けれど、その決まりの背後には、単なる安全だけではない、文化としての「つながり」や「役目」があるような気がした。学校という場所が、子どもと大人をつなぐ結び目になっているのだ。
2025年6月 人びと ベトナム | |
男の子 漢字 旗 女の子 ハノイ 老婆 学校 |
No
12863
撮影年月
2025年3月
投稿日
2025年06月22日
撮影場所
ハノイ / ベトナム
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R V
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF