香川県の名所として名高い金刀比羅宮を訪れたときのこと。石段を登った先、境内の一角に、風情ある茅葺屋根の建物が静かに佇んでいた。伝統的な日本建築らしい構造で、開放的な造りが印象的だ。壁というものがほとんどなく、外からでも内部の様子を自然と垣間見ることができる。僕が立っている場所からも、中で神職が静かに腰を下ろし、書類に向き合っている姿が見えた。
西洋の建築様式が壁と天井で空間を囲い込むのに対し、日本建築は「屋根を柱で支える」ことを基本としている。そのため、壁は補助的な役割にとどまり、空間が内と外を曖昧にしながら緩やかにつながっているのだ。まさに、自然との調和を重んじてきた日本文化の象徴と言える。建物には窓らしいものはなく、あるのは簡素な簾だけ。おそらく冬になれば障子を立てて風を防ぐのだろうが、それでも夏は蒸し暑く、冬は底冷えするに違いない。
このような建築様式は「書院造」や「数寄屋造」といった形式の流れを汲みながら、神社建築では古くから見られるもの。時代が進んでも、こうした伝統が守られている場所に立つと、時間の流れそのものが緩やかになる気がした。
2007年11月 香川 人びと | |
お堂・ホール 琴平 提灯 神職 神社 鳥居 |
No
1206
撮影年月
2007年9月
投稿日
2007年11月15日
更新日
2025年07月18日
撮影場所
琴平 / 香川
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
CANON EOS 1V