倉敷の美観地区には、その名をわざわざ名乗らなくてもよさそうな街並みが保存されていて、岡山観光の定番として長らく働いている。中心を流れる倉敷川の両脇には、白壁の建物が行儀よく並び、観光客もそれに倣って概ね行儀よく歩いている。ここを歩いていると、タイムマシンに乗って過去へ戻った、というよりも、過去から現在を見物されているような妙な気分になる。歴史地区というものは、往々にして人を主役にしてくれない。
通りかかった家屋の壁に目をやると、古い壁が残っていた。いわゆるなまこ壁である。漆喰で作られた四角い突起が、規則正しく壁一面に並び、装飾というよりは、几帳面な性格がそのまま形になったようにも見える。この漆喰をかまぼこ状に盛り上げて塗る工法から、なまこに似ているという理由でこの名が付いたらしい。食べ物に似ているからといって食欲が刺激されることはないが、名前の由来を知ると少しだけ親しみが湧く。
なまこ壁は見た目のためだけに存在しているわけではない。防火や防水の効果があり、特に土蔵に多く用いられてきたという。倉敷が商業の町として栄えた時代、財産を守るための知恵が、結果として現在の景観を形作っているわけだ。
| 2007年11月 建築 岡山 | |
| 倉敷 パターン 壁 |
No
1177
撮影年月
2007年9月
投稿日
2007年11月01日
更新日
2026年01月06日
撮影場所
倉敷 / 岡山
ジャンル
建築写真
カメラ
RICOH GR DIGITAL