インドはナシークの街角を、カメラを首から下げて歩いていた。この国では、外国人を見つけるとどこからともなく子どもたちが集まってくる。とりわけ元気な男の子は、カメラのレンズを目がけて猪のように突進してくるのが常である。しかし、そうして騒ぎ立てる男の子たちの後ろから、実は女の子もじわじわとこちらに惹きつけられて近寄ってくる。きらきらとした目でこちらの様子を窺っているのだ。どうやら、未知のものに対する旺盛な好奇心というものには、男女の性差などまるでないらしい。
その男女の性差などまるでないはずの好奇心だが、年齢を重ねるにつれてその表現方法にはいささか違いが出てくる。インドの伝統的な社会では、女性が成長するに伴って、他人の前での慎ましさや控えめな態度を求められることが多い。彼女たちが額につけるあの赤い丸や飾りは「ビンディ」と呼ばれる。これはサンスクリット語で「点」を意味するビンドゥが語源だ。古代のインドでは、眉間のあたりにある第6のチャクラ、つまりインスピレーションを司る場所に朱を塗ることで、魔を払い集中力を高める意味があったらしい。大人の女性になれば、それが社会的な義務としての装飾へと変化し、同時にうかつに感情を表に出さない慎み深さのヴェールにもなっていく。
そんな大人の世界に課せられる慎ましさのヴェールなど、まだ露ほども知らぬといった風な二人の女の子が、僕の目の前に立ちはだかった。彼女たちは他のお騒がせな男の子を蹴散らすようにして、僕の手元にあるカメラのレンズを真っ直ぐに見据えてきたのである。手前の女の子の額には、ビンディなのか、白っぽい小さな印が見える。小鼻には可愛らしい鼻ピアスまで光っていた。これほど至近距離でレンズを見つめる彼女たちの目つきには、一切の迷いがない。ただし、右側に写る手前の女の子は、強がってはいるものの口元が少しもぞもぞとしており、どこか照れくさそうな色を隠しきれていなかった。
| 2015年7月 インド 人びと | |
| 好奇心 二人組 瞳 女の子 ナシーク |
No
9366
撮影年月
2010年9月
投稿日
2015年07月17日
更新日
2026年07月12日
撮影場所
ナシーク / インド
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM