目玉のような丸窓が見下している建物は不穏で、映画に出てきたら間違いなく悪の巣窟だろう

遊具のある芝生を登っていくと、丘の上に異様な建物が待ち構えていた。古びた大きな建物で、3つの塔がそびえている。丘の上から目玉のような窓で見下ろしてくる建物は不穏な佇まいだ。映画に出てきたら、間違いなく悪の巣窟だろう。でも中の様子を確かめる術はない。この建造物の中には入れず、外から眺めるしかできない。

横浜の根岸森林公園に建つこの不思議な建造物は、旧一等馬見所と呼ばれるもの。その名が示す通り、競馬を見るところだ。根岸森林公園はかつて存在した横浜競馬場の跡地に造られた総合公園で、旧一等馬見所はその観客スタンドの残滓だ。写真の建造物に観客席が見当たらないのは、写真を撮ったのが競馬場の外側からだからで、裏側には座席が残っているはず。確定的なことが分からないのは、この建物の反対側に回れないからだ。

高台に立地していた横浜競馬場は1942年に第二次世界大戦が始まると横須賀の軍港が一望できるという理由から、海軍省に接収されてしまう。そのまま終戦後は米軍に接収され、接収が解除された部分は根岸森林公園になっているものの、旧一等馬見所の反対側は今でも在日米海軍横須賀基地司令部が管理しているエリアで一般人は入れない。近代化遺産を見るために来ただけなのに、思いがけずに別の近代史の一端に触れることになった。

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