中華文明は、メソポタミア、エジプト、インダスと並ぶ「四大文明」のひとつに数えられている。その歴史は実に五千年ともいわれ、長きにわたって王朝が交代しながらも、その都度蓄えられてきた知恵と美術工芸の結晶が積み重なってきた。そう考えると、その膨大な財宝のごく一部でも一般公開されているということ自体が、じつはとんでもなく贅沢な体験なのかもしれない。ここ台北にある故宮博物院は、まさにその「とんでもない体験」を味わえる場所なのだ。
館内を歩いていると、僕のような一般庶民では本来縁のないような、歴代皇帝の身の回りにあったであろう工芸品の数々が整然と並んでいる。金属の光沢、陶磁器の艶、彫刻の精緻さ。どれを取っても、「贅を尽くす」とはこういうことかと圧倒される。僕にはその優劣など分かりようもないが、それでも目を奪われる美しさがそこにはあった。
ふと足を止めたガラスケースには、馬の形をした白磁の置物が展示されていた。僕の立ち位置からは、ふっくらとした丸い馬のお尻がこちらを向いている。思わず微笑んでしまう光景だ。何気なくケースの向こう側を見ると、一人の女性がじっと見入っていた。きっと彼女の視線の先には、躍動感に満ちた馬の顔があったのだろう。同じ展示でも、立ち位置ひとつでまったく違う表情を見せるのが面白い。
2016年11月 人びと 台湾 | |
馬 博物館・美術館 ストライプのシャツ 台北 女性 |
No
9948
撮影年月
2016年9月
投稿日
2016年11月25日
更新日
2025年06月28日
撮影場所
台北 / 台湾
ジャンル
スナップ写真
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
SONNAR T* FE 55MM F1.8 ZA