ミャンマーの旧首都であるヤンゴンを歩いていた。国内最大の聖地として知られるシュエダゴォン・パヤーの近くまでやって来ると、路上の片隅にひどく窮屈そうな鳥かごが置かれているのを見つけた。針金で編まれたかごの中には、小さなスズメのような鳥がぎっしりと詰め込まれていて、しきりに身を寄せ合っている。この小鳥たちは、誰かの家で綺麗な声で鳴く愛玩用として売られているわけではない。道行く人がお金を払って大空へ逃がしてやるための、いわば「徳の素」として路上でスタンバイさせられているのである。
その「徳の素」としてスタンバイさせられている小鳥たちの傍らには、商売人が退屈そうに座っている。東南アジアの仏教圏では、囚われている生き物を解放してやると、巡り巡って自分に徳が返ってくるという大変便利な教えがあるらしい。客がいくらかの札束を渡して鳥をかごから出してやれば、客は来世へ向けた徳という見えないポイントを稼ぐことができ、鳥売りの方はその日の晩飯代を稼ぐことができる。なんともよく出来たウィン・ウィンの関係が成立しているのだ。つまりのところ、ここでは手っ取り早くお金で徳が買えるシステムが路上に確立されているのである。
その手っ取り早くお金で徳が買えるシステムは、何もこの国だけの専売特許というわけではない。かつてホーチミン市の中国寺院の門前でも同じような鳥かごを持つ男を見かけたし、バンコクの有名なエラワン廟の前にもあった。ジャカルタでも放鳥用の小鳥が売られていたから、東南アジア一帯に広く根付いた手堅い商売なのだろう。日本にも神仏の教えに従って捕獲した魚や鳥を野に放つ放生会(ほうじょうえ)という古ゆかしい風習がある。しかし、見知らぬ商人が捕まえてきた小鳥をその場でお金を出して逃がすというのは、なんだか見事なマッチポンプのような気がしてならない。
| 2010年8月 動物 ミャンマー | |
| 鳥 籠 ヤンゴン |
No
4416
撮影年月
2010年3月
投稿日
2010年08月04日
更新日
2026年06月09日
撮影場所
ヤンゴン / ミャンマー
ジャンル
動物写真
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM