観光客で無駄に賑わう鎌倉の街を外れ、北鎌倉の静かな山へ向かって歩いていた。やがて、鎌倉五山の第四位という立派な肩書きを持つ浄智寺の入り口にたどり着く。境内へ続く道には、やけに古びた石造りの階段が待ち構えていた。見上げると、その先には中国風の釣鐘がぶら下がった珍しい楼門が建っている。なんでも、この寺の創建は鎌倉時代の1283年にまで遡るらしい。目の前にある石段がいつ作られたものかは定かではないが、どう見ても最近のものではないことだけは確かだ。ちょうど一人の女性が、その歴史ありげな石段をえっちらおっちらと登っているところだった。
そのえっちらおっちらと登る女性の足元をよく見てみると、階段の表面がひどくすり減っているのが分かる。長い年月の間に、数えきれないほどの参拝客がご利益を求めて踏みつけ続けたせいで、石の表面がすっかり凸凹になっているのだ。水滴が石を穿つという言葉があるが、人間の足裏の摩擦というのも存外バカにできないものらしい。だが、風情があると言えば聞こえはいいものの、実際にここを歩く身からすれば甚だ迷惑な話である。少しでも気を抜けば、足首をひねって石段を転げ落ちることになりかねない。その転げ落ちる危険を孕んだ凸凹の石段を前にして、僕は少しばかりうんざりした気分になった。
| 2005年11月 建築 神奈川 | |
| 門 鎌倉 階段 ボロボロ 寺院 |
No
241
撮影年月
2005年10月
投稿日
2005年11月18日
更新日
2026年05月19日
撮影場所
鎌倉 / 神奈川
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
CANON EOS 1V