ムンバイの路地に迷い込んだのは、午後の陽射しが建物の隙間を縫うように降り注いでいた頃だった。大都市の雑踏を抜けて、少し静かな一角に足を踏み入れたつもりだったが、数歩進むだけで周囲の地形感覚が失われていく。地図に出てこないような細い道が入り組み、どこがどこにつながっているのか、方向感覚もすぐに曖昧になった。
そんなとき、ふいに現れたのが、上半身裸で笑顔を浮かべたひとりの男性だった。こちらが迷っているのを察したのか、言葉少なに手振りで道を指し示してくれる。軽く会釈をして進もうとしたとき、「写真を撮れ」と言わんばかりに彼が笑顔で立ち止まった。
シャッターを切る直前、彼の隣にいた女性も自然と笑顔を浮かべて並んだ。どうやら通りかかっただけのようだが、その場に居合わせた偶然を楽しんでいるようだった。
けれど、レンズ越しに一番最初に目を奪われたのは、その二人の間に立っていた小さな女の子だった。顔をのぞかせるように立っていたその子は、二人の笑顔と対照的に、どこか無表情でじっとこちらを見つめていた。彼女の静けさが、この瞬間の喧騒のなかで妙に際立っていた。
2025年6月 インド 人びと | |
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No
12860
撮影年月
2024年5月
投稿日
2025年06月21日
撮影場所
ムンバイ / インド
ジャンル
ポートレイト写真
カメラ
SONY ALPHA 7R V
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF