東京の、かつての東海道である第一京浜を当てもなく歩いていた。この道は車の往来ばかりが激しく、風情もへったくれもない。排気ガスに顔をしかめながら田町のあたりをうろついていると、やけに細長いビルに行き当たった。そのビルの一面は、上から下までびっしりと赤い壁になっている。細かい赤いタイルで覆われており、無機質な街並みの中でひどく浮き上がって見えた。空に向かってどこまでも伸びていくような錯覚を覚えるが、所詮はただの建造物である。
その所詮はただの建造物であるはずの赤い壁だが、よく見るとひとつも窓が設けられていない。窓がないビルというのは、どうにも息苦しそうで頂けない。建築基準法上の採光の規定はどうなっているのかと、いらぬお節介を焼きたくなる。壁の中腹には「TSUTAYA」と書かれた青い看板が縦にへばりついている。赤と青の補色の対比が目に痛い。色彩心理学において赤は興奮を、青は沈静を促すというが、これではどっちつかずで落ち着かない気分にさせられる。
その落ち着かない気分のまま僕がぽかんと壁を見上げていると、ひとりの男が視界の端から滑り込んできた。男は白い服を着て、なぜか腕を固く組んだまま歩いている。何かに腹を立てているのか、それとも単に肌寒いのかは定かではない。ただ、僕とは違って、この異様なほど赤くて高い壁には微塵も興味がないらしい。歩調を緩めることも、見上げることもなく、スタスタと僕の前を通り過ぎていった。
| 2017年8月 町角 東京 | |
| 赤 看板 街灯 田町 壁 |
No
10263
撮影年月
2017年4月
投稿日
2017年08月28日
更新日
2026年05月02日
撮影場所
田町 / 東京
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
SONNAR T* FE 55MM F1.8 ZA