三人のサラリーマン風の男たちが、僕の目の前に立っている。皆一様に、山手線が来るのを待っているのだ。その無言の列に紛れていると、僕自身もこの場の一部であるかのような錯覚を覚える。やがて、山手線が到着するというアナウンスが響き渡った。
そのとき、僕のすぐ前にいた一人の男が、不意に頭を掻き始めた。あたかも、電車が来たという合図が、忘却の底に沈んでいた何かを掘り起こしたかのように。しかし、その動作に意味を見いだす間もなく、時間はすでに押し流されていた。山手線は、鈍い轟音を伴いながら、プラットホームに滑り込んでくる。その勢いの前では、男の小さな仕草もまた、風に紛れる埃のように消えていった。
2017年7月 町角 東京 | |
背中 鞄 サラリーマン 駅 列車 |
No
10197
撮影年月
2016年11月
投稿日
2017年07月02日
更新日
2024年11月25日
撮影場所
新橋 / 東京
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
SONNAR T* FE 55MM F1.8 ZA