ダッカ郊外の集落を歩いていると、竹とトタンで組まれた家々のあいだから子どもたちが顔を出した。裸足のまま駆け回るその姿は、埃っぽい空気の中で妙に生命力に満ちていた。ふと、ひとりの男の子が弟を抱えて立っているのが目に入った。ふたりは兄弟らしかった。上の子はまだ幼いながらも、しっかりと弟を腕に抱え、まるで一家の代表のようにこちらを見据えていた。弟のほうは全裸だったが、胸元には不釣り合いに大きなネックレスが光っている。きっと母親か兄の持ち物を借りているのだろう。
この国では、貧しい家でも装飾品だけは欠かさないことが多い。イスラムの文化圏では、金や銀の装飾が「お守り」としての役割を持つことがあるという。つまり、それは単なる飾りではなく、祈りの具現なのだ。だが、弟の表情は神の加護を意識しているというより、見知らぬ異国人にカメラを向けられて困惑しているように見えた。兄のほうは眉をひそめながらも、少し誇らしげに弟を抱きしめている。
| 2010年3月 バングラデシュ 人びと | |
| 不安 男の子 兄弟 ダッカ ネックレス 坊主頭 上半身裸 |
No
3807
撮影年月
2009年9月
投稿日
2010年03月11日
更新日
2025年11月19日
撮影場所
ダッカ / バングラデシュ
ジャンル
ポートレイト写真
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM