この日はムンバイの南にあるサッスーンドックに来ていた。ここは町中からさほど離れていないところにある漁港だ。大量の魚が水揚げされていて、大勢の人が働いている。写真の男もサッスーンドックで働いていた男だ。
男は壁に開けられた大きな穴の中に置いたタイヤの上に腰を下ろしていた。手にはナイフが見えるから、男の仕事は水揚げされたばかりの魚をさばくことなのだろう。男はナイフを片手に僕を見て微笑んでくれた。
ちなみにサッスーンドックという名前は、ユダヤ商人であったデイヴィッド・サスーンにちなんでいる。1875年に埋立地に造られたこのドッグはデイヴィッド・サスーンが設立したサスーン商会が所有していたため、そう呼ばれるようになったようだ。バクダット出身だったデイヴィッド・サスーンは、迫害を逃れてムンバイに移住すると商売で成功するとともに、慈善活動を幅広く行ったとされるユダヤ系コミュニティの中心だった人物だ。
インドにユダヤ人。インドは多数のヒンドゥー教徒と少数のイスラム教徒、シク教徒、キリスト教徒、ジャイナ教徒で構成されていると思っていたので意外だった。けれど古くからインドにはユダヤ人が住んでいたようで、ベネ・イスラエルというインドにあるユダヤ系コミュニテイーを指す言葉もある。確かにムンバイにもコルカタにもシナゴークがあるし、コルカタでは自称ユダヤ人という男性が声を掛けてきた。今現在でもユダヤ人コミュニティは健在なのだろう。少数ながらしっかりと独自の文化を保持し続けるユダヤ人はさすがとしかいいようがない。
ちなみにシャンプーやコンディショナーのブランドでもあるヴィダル・サスーンもユダヤ系だけれどデイヴィッド・サスーンと関係はないようだ。
2011年2月 インド 人びと | |
穴 ナイフ 男性 ムンバイ |
No
5190
撮影年月
2010年9月
投稿日
2011年02月15日
更新日
2024年01月07日
撮影場所
ムンバイ / インド
ジャンル
ポートレイト写真
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM