大きな屋根に覆われたこの場所は町の市場だった。大勢の人が働いていて、大勢の買い物客が訪れている。市場は賑わっていた。ここでは日常品を市場で買うのが一般的なようだ。何せこの歴史あるこの古都にはスーパーマーケットなるものは存在しない。
市場の片隅では、椅子に腰掛けながらパンを売っている女性がいた。傍らには売り物のパンが山積みになっている。そして、ちょうど女性は買い物客のひとりと話をしていることろだった。値段交渉でもしているのかもしれない。
サマルカンドの市場では見かけなかったような気がするけれど、中央アジアの市場ではキムチが売られているのを見かけるのは珍しいことではない。別に韓国料理が流行っている訳ではない。朝鮮族の人たちが自分で作ったものを販売しているのだ。中央アジアは朝鮮半島から遠く離れているのだけれど、思いの外大勢の朝鮮族の人が住んでいるのだ。
中央アジアには旧ソ連国内に住む朝鮮人のおよそ70%が住んでいて、ほとんどはスターリンの時代に極東から強制移住させられた人たちの末裔だそうだ。韓国の人や北朝鮮の人には信じがたいかもしれないが、極東のソ連領に住む朝鮮人は第二次世界大戦当時、日本にスパイとして協力するのではないかと疑われたのだ。猜疑心とは恐ろしいもので、結局17万人くらいの人が中央アジアに強制的に移住させられたのだという。市場で見かける東アジア人はそのような過酷な歴史の生き証人でもあるのだ。
No
180
撮影年月
2000年9月
投稿日
2005年09月18日
撮影場所
サマルカンド / ウズベキスタン
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
CANON EOS KISS