ある国で当たり前とされる常識が、海を渡った別の国でも通用するとは限らない。世の常識というものは、場所や時代によっていくらでも変化する頼りないものだ。日本ではお目にかかれない奇妙な光景を異国の路上で突如として突きつけられる。これこそが物見遊山の何よりの醍醐味だろう。僕が台湾の賑やかな街角に立って、まず日本との違いに驚かされたのは、街中を文字通り星の数ほど埋め尽くしているバイクの群れとその破天荒な乗り方であった。
その街中を文字通り星の数ほど埋め尽くしているバイクの群れだが、一見すると日本の原付スクーターのようである。しかし、実はその多くが100ccを超える立派な小型二輪車なのだ。台湾の街は坂が少なくて道が狭いため、馬力のあるスクーターが生活の足として独自の進化を遂げたらしい。日本では50cc以下の原付での二人乗りは法律で厳しく禁止されている。だが、この地では日常茶飯事の光景だ。それどころか、信じられないことに一台の小さな車体にぎゅうぎゅうになって三人乗りを敢行している手合いまで、平然と公道を闊歩している。
その平然と公道を闊歩している三人乗りの実態をよく観察してみる。実は台湾の道路交通法でも、バイクの三人乗りはれっきとした違法行為であるらしい。しかし、現地の人間たちはそんな細かい規則などどこ吹く風といった様子で、お巡りさんの目の前をすり抜けていく。写真に写る仲睦まじい家族も、まさにその法を恐れぬたくましい三人組であった。お父さんの大きな背中に、青いシャツを着た男の子がしがみつき、その後ろに奥さんらしき女性が器用に腰掛けている。よくよく足元を見てみれば、フロントのステップ部分にはビニール袋に入った大量の野菜までぶら下がっている。家族総出で夕飯の買い出しにでも出かけた帰り道なのだろう。
その家族総出で夕飯の買い出しにでも出かけた帰り道の様子を見つめながら、僕は彼らの頭部にふと目を留めた。どれほど定員オーバーの無茶な乗り方をしていようとも、三人とも頭には寸分の隙もなく、頑丈そうなヘルメットをきちんと着用している。台湾ではヘルメットの未着用に対する取り締まりが日本以上にひどく厳格で、罰金も高いらしい。安全云々よりもお金が絡むと人間は律儀にルールを守るのだろう。
| 2019年12月 人びと 台湾 | |
| 家族 ヘルメット バイク サンダル サングラス 台北 三人組 |
No
11303
撮影年月
2019年7月
投稿日
2019年12月01日
更新日
2026年06月18日
撮影場所
台北 / 台湾
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS BATIS 1.8/85