幼い女の子がサイクルリクシャーの脇でひとりで遊んでいた

サイクルリクシャーの脇に立つ女の子
サイクルリクシャーの脇に立つ女の子

足を踏み入れた路地には、日常生活がそのまま溢れ出していた。インドの町ベルハンポルの一角である。道端には古びたサイクルリクシャーが何台も駐められ、鉄の骨組みには布の幌がくたびれて垂れ下がっている。近くには洗濯物が所狭しと干され、風が吹けば隣家の洗濯物と絡まりそうな距離感だ。路地を行き交う大人たちの声に混じって、子どもたちが走り回る音が響き、狭い空間は落ち着きとは縁遠い騒々しさに包まれていた。

そんな喧噪の中で、僕の目の前に現れたのは、一人の小さな女の子だった。写真に写っているその子は、パンツ一枚しか身につけていない。真夏のベルハンポルでは、それが一番合理的な服装なのかもしれない。他の子どもたちと群れず、サイクルリクシャーの脇で独り遊びをしていたのは、彼女の性格なのか、あるいは単にその時だけの偶然だったのか。僕に気づくと女の子は振り向き、指を口に入れながら、何とも形容しがたいきょとんとした表情を見せてくれた。

リクシャーという乗り物は、インドやバングラデシュの都市生活には欠かせない存在だが、地方都市ベルハンポルの路地裏では、単なる交通手段以上に生活の一部と化している。時に荷物置き場になり、子どもの遊び場になり、日差しを避けるための陰ともなる。写真の女の子にとっても、このサイクルリクシャーはただの交通手段ではなく、格好の遊具だったのだろう。もっとも、リクシャーの車輪に指でも挟めば泣くに泣けない事態になるが、そうしたことを考えるのは大人だけである。

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ENGLISH
2012年8月 インド 人びと
ベルハンポル サイクルリクシャー 女の子 上半身裸 車輪

PHOTO DATA

No

6763

撮影年月

2011年6月

投稿日

2012年08月31日

更新日

2025年09月03日

撮影場所

ベルハンポル / インド

ジャンル

ストリート・フォトグラフィー

カメラ

CANON EOS 1V

レンズ

EF85MM F1.2L II USM

日本国外で撮影した写真

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