目黒にある林試の森公園のすぐ脇を歩いていた。ここはかつて国の林業試験場だった場所で、今でも珍しい樹木がたくさん植えられている都立の公園だ。そんな広大な敷地の隣に、鉄柵で囲まれた小さな児童公園が放置されていた。どうやら隣接する国家公務員の官舎に付属していたものらしい。官舎は数年前に閉鎖され、民間による再開発でもされるのかと思っていたが、今のところ全くその気配はない。住人が立ち去った建物は閉鎖されたままだ。それに伴い、この付属の公園も立入禁止となり、ひっそりと閉ざされてしまったのである。
そのひっそりと閉ざされてしまった公園の中は、当然のごとく草ぼうぼうであった。すぐ隣の林試の森公園からは、無邪気に走り回る子どもたちの声が聞こえてくる。しかし、こちらの空間に彼らが入り込む隙は微塵もない。雑草の海の中には、かつては青や赤で塗られていたであろう塗装がボロボロに剥がれ落ちた滑り台だけが、ひどく無骨な姿で佇んでいた。
その無骨な姿で佇む滑り台をよく見てみると、階段の隙間を縫うようにして、一本の細い樹木が青々と葉を茂らせていた。鳥のフンなどに混じった種子が人工物の隙間に落ちて発芽し、数年がかりで成長するという現象は、空き地などではよくあること。役所が再開発の計画を先延ばしにして怠惰にまどろんでいる間に、自然界の植物たちは滑り台を足場にして、着実に自分たちの領土を広げているのだった。
| 2017年9月 静物 東京 | |
| 滑り台 目黒 公園 ボロボロ |
No
10286
撮影年月
2017年5月
投稿日
2017年09月20日
更新日
2026年05月19日
撮影場所
目黒 / 東京
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
SONNAR T* FE 55MM F1.8 ZA