薄暗いを通路を帽子をかぶってマスクをした女性が自転車で駆け抜けた

新宿駅の南口には上質で本物志向の大人の女性がターゲットと謳うNEWoManというファッションビルが建っているし、タカシマヤまで足を伸ばせばハイブランドのお店もある。ちょっと小洒落た雰囲気を醸し出している。スポーツ用品やアウトドア用品を販売するお店もあるから健康的なイメージもあるかもしれない。しかしながら南口の本当の主はそのようなスポーツ用品店でもキャンプ用品店でもハイブランドのお店でもないと思っている。本当の主はウインズ新宿だ。

ウインズ新宿とは新宿にある日本中央競馬会の場外勝馬投票券発売所のこと。平たく言うと競馬の馬券を売っているところだ。ウインズ新宿が開設されたのは戦後間もない1949年で、当初は新宿三丁目にあったという。それが新宿西口に移転し、現在の場所に再移転したのは1965年だというからもう60年くらい同じ場所に居座っていることになる。

60年前というとNEWoManはおろか、スポーツ用品店・キャンプ用品店も存在しないし、タカシマヤの建つ場所は新宿貨物駅だった時代だ。そのような時代からウインズ新宿はここに居を構え商売を続けている。今でも競馬が開催される日になると周辺の路上に馬券を買い求めに来た人が溢れているのを見ると、新宿南口の主は公営ギャンブルの一端を担うウインズ新宿だと感じるのだ。

あいにくこの日は競馬が開催される日ではなかったのでウインズ新宿は閉まっていた。馬券を求めに来た人の姿も近くの路上にいつもいる交通整理する警備員の姿もなく、周辺は静かだった。目の前にあるトンネルのような通路もときおり人が通り抜けるだけだった。