マイメンシンの町は、午後になると空気がゆるんでくる。喧騒がいったん落ち着きを見せ、影が少しずつ伸びはじめる。そんな路地の片隅で、ひとりの母親が赤ん坊を抱いて腰を下ろしていた。
母親の体は、やや前かがみに傾いている。彼女の目元にはわずかな疲れがにじんでいた。日々の暮らしと子育て。どちらも軽々とこなせるようなものではないだろう。服の柄も肌の色も、土と風のなかにすっかり馴染んでいる。
彼女の膝の上には、まだ言葉も話せぬ小さな赤ん坊がいた。むちむちとした手足をゆっくりと動かしながら、その目はじっと遠くのほうを見ていた。何かを探しているようでも、何も見ていないようでもある。その視線の先に何があったのか、僕にはわからなかった。
母はカメラに気づいても、特に意識する様子はなかった。ただ、穏やかに、しかし確かに赤ん坊を抱く手を緩めることなく、その場に座り続けていた。時間の重みのようなものが、ふたりの周りに静かに降り積もっていた。
2010年4月 バングラデシュ 人びと | |
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No
3898
撮影年月
2009年9月
投稿日
2010年04月01日
更新日
2025年06月13日
撮影場所
マイメンシン / バングラデシュ
ジャンル
ポートレイト写真
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM