ムンバイの太陽は容赦がなかった。照りつける日差しがアスファルトを焼き、海風も熱を帯びている。僕の体は、まだ完全に夏になり切れていない日本の気候から、このインドの灼熱の世界へと放り込まれた。結果は明白だった——あっという間に夏バテである。
だが、それは僕だけではなかった。この街に暮らす人々も、決してこの暑さに慣れているわけではないのだ。アラビア海に突き出したハッジ・アリー廟の周辺では、多くの人々が汗を拭いながら歩いていた。白亜の聖地に続く長い参道は、日陰ひとつなく、まるで太陽の下でじっくりと焼かれているような感覚に襲われる。
ふと視線を移すと、廟の近くの岩場で海水浴に興じる人々がいた。決して観光客ではなく、地元の人々だ。Tシャツのまま海へと飛び込み、子どもたちは歓声を上げながら波間で戯れている。 それはまるで、都会の喧騒から逃れるかのようなひとときだった。
そして、僕のカメラが捉えたのは水を頭からかぶる女の子の姿。地面から立ち昇る熱気を振り払うかのように、顔を上げて一気に水を浴びていた。頭を振り、水しぶきがキラキラと陽光に輝く。少しでも涼を取ろうとする彼女の仕草に、この暑さが決して日常の一部ではないことを改めて思い知る。強烈な太陽の下で、そんなことを考えながら、僕は乾いた喉を潤すために露店でペットボトルの水を買うことにした。
2025年3月 インド 人びと | |
女の子 ムンバイ ペットボトル |
No
12833
撮影年月
2024年5月
投稿日
2025年03月11日
撮影場所
ムンバイ / インド
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R V
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF