メキシコシティの中心部にあるアラメダ・セントラルは、かつてラテンアメリカ最古の公園として整備された場所だという。噴水や彫像が点在し、昼間は観光客と市民が入り混じっている。日差しが強烈で、真夏でもないのに影を求めて歩く人が多い。標高二千メートルの高原都市だから気温こそ穏やかだが、太陽の光は油断ならない。おまけにこの街の空気は乾いていて、焼きつくような陽射しが皮膚にまとわりつく。
公園の小道には、露店がいくつも並んでいた。綿菓子、とうもろこし、プラスチック製の聖母マリア像まで、売っている物は雑多で、まるで人間の欲望の見本市のようだ。その中に、一人の女性がいた。彼女は模様の入った日傘を差しながら、飲み物を売っていた。日傘の柄は葉の模様で、風に揺れるたびに本物の木陰と見まごう。汗ひとつかかず、落ち着いた様子で客を待つ姿は、もはや小商いというより一種の儀式のようにも見える。
カメラを向けると、女性はすぐに気づき、にこりと笑った。作り笑いのようでもなく、かといって愛想笑いでもない。長年、強い太陽と観光客のカメラの両方にさらされてきた人の笑顔には、ある種の免疫のようなものがあるのだろう。彼女の傘の下だけが、なぜか少し涼しく見えた。
| 2010年11月 メキシコ 人びと | |
| メキシコシティ 笑顔 日差し 傘 女性 |
No
4878
撮影年月
2010年6月
投稿日
2010年11月23日
更新日
2025年11月07日
撮影場所
メキシコシティ / メキシコ
ジャンル
ポートレイト写真
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM