カサブランカにあるハッサン2世モスクは、やはり巨大だった。モロッコの象徴の一つとして知られるこの建築物は、アフリカ大陸で最大規模を誇るモスクであり、ミナレットの高さは210メートルに達するという。世界で最も高い宗教建築だと案内板に書かれていたが、それが事実かどうかは知らない。とはいえ、高さを競う競技会でもあるまいし、建てられた当時のフランス人建築家が「とにかく世界一にしておけ」とでも言ったのかもしれない。
モスクの中庭から奥に進むと、長く続く柱の列と、それを繋ぐアーチが視界に入る。石灰岩と大理石を組み合わせた造形は、直線と曲線が際限なく反復する幾何学模様のようで、目を凝らすと視界がかえって混乱してくる。まるで建築家が幾何の問題集を解きながら設計を進め、途中で答えを放棄した結果がそのまま石に刻まれてしまったような気がしてならない。
柱の影は規則正しく床に落ち、昼の太陽がそれを強調している。床のモザイク模様と影とが重なり合い、見ているうちに自分がチェス盤の上の駒になった錯覚すら覚える。ふと黒い衣をまとった人物がアーチの下を横切った。その姿はまるで幾何学模様の中に迷い込んだ影法師のようだった。
2014年10月 建築 モロッコ | |
アーチ カサブランカ モスク 柱 影 |
No
8842
撮影年月
2009年12月
投稿日
2014年10月19日
更新日
2025年09月04日
撮影場所
カサブランカ / モロッコ
ジャンル
建築写真
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM