ダッカの町角に四輪の台車が停められていて、その上にはマンゴーがずらりと並べられていた。色つやも形も揃っていて、遠目にも十分に食欲をそそる。インドでもよく見かける光景だが、ここバングラデシュにおいてもマンゴーはまさに国民的果物である。国土全体で年間百数十万トンが収穫されるというから、その消費量の多さは想像に難くない。しかも旬の時期には、バザールから路地裏の露店に至るまで、どこを歩いてもマンゴーの香りに出くわす。こうなると町角の風景というより、季節の一部にさえ思えてくる。
台車の向こうには、頭に布を巻いた露店の商人が立っていた。彼は手に一つのマンゴーを持ちながら、まだ見ぬ客を待っているようだった。じっと見ていると、その男の顔にはわずかながら不敵な笑みのようなものが浮かんでいた。客を手玉に取る算段を巡らせているのか、それとも単に昼下がりの退屈を紛らわせているだけなのか、真相は知る由もない。ただ、果物と同じく人間もまたふっくらとしていて、どちらが主役なのか見分けがつきにくい。
2014年10月 バングラデシュ 人びと | |
ダッカ マンゴー 露天商 ワゴン 車輪 |
No
8841
撮影年月
2009年9月
投稿日
2014年10月18日
更新日
2025年09月04日
撮影場所
ダッカ / バングラデシュ
ジャンル
スナップ写真
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM