芝の一角、増上寺の境内を歩いていると、片隅に地蔵がずらりと並んでいる場所に行き当たる。長い歴史を持つ寺院だけに、こうした光景もさほど珍しくはないはずなのに、足はなぜか止まってしまう。以前はこれらを一括して水子地蔵だと思い込んでいたのだが、調べてみると少し事情が違うらしい。ここに奉安されている地蔵たちは、子どもの健やかな成長や安産を願って寄進されたものだという。思い込みというのは、たいてい説明書きを読む前に完成してしまうものだ。
そう言われて改めて眺めると、どの地蔵の顔にも幼さが残っている。悟りを目指す修行僧というより、昼寝の途中で起こされた子どものような表情だ。如来になる気配は今のところ見当たらない。もっとも、無理に悟らなくてもよいのだろう。地蔵は衆生救済が仕事なのだから、険しい顔をしている必要もない。
地蔵の傍らには色とりどりの風車が供えられている。これは江戸時代から続く習慣で、子どもの玩具を供えることで成長を願う意味があるらしい。時折、芝の空を抜けてきた風が境内を通り抜けると、風車は思い出したように勢いよく回り出す。その横で、一体の地蔵は静かに目を閉じたままだ。風を感じているのか、単に居眠りしているのかは分からないが、少なくとも感動を押し売りしてくる様子はなかった。
| 2012年12月 静物 東京 | |
| 地蔵 芝 寺院 風車 |
No
7098
撮影年月
2012年11月
投稿日
2012年12月21日
更新日
2026年01月05日
撮影場所
芝 / 東京
ジャンル
静物写真
カメラ
OLYMPUS PEN E-P2
レンズ
M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42MM