かつてビール工場があった場所をウロウロしても、その名残を感じ取るのは難しい。再開発されてから時間が経つ工場跡地にホップの残り香はどこにもない。ここでビールを醸造していたのを今に伝えるのはヱビスビール記念館くらいだろうか。
工場はここ恵比寿からなくなってしまったものの、ヱビスビールというブランドは今でもしっかり生きている。これはサッポロビールの前身である日本麦酒醸造會社が、ドイツ人技師カール・カイザーを招聘して醸造したビールのブランドに付けたものだ。当初は同じ七福神の大黒様にあやかろうとしていたところ、既に「大黒ビール」が存在したために「ヱビスビール」になったのだという。そのようにして名付けられたブランドが、その後にビール工場のあった場所の地名にもなってしまうのだから、世の中どうなるかわからない。
もしビールのブランドが大黒ビールになっていたら、今のJR山手線の恵比寿駅も大黒駅になっていたのかもしれないと思うとちょっと感慨深い。結果として、ブランドがヒンドゥー教の破壊神シヴァと同一視され、いつも怒ったような顔をしている大黒天ではなく、釣り竿を持ってニコニコ笑っている恵比寿様になり、町のイメージも柔和になって良かったのではないだろうか。
2021年5月 人びと 東京 | |
バック・ショット ベンチ カップル 屋根 恵比寿 |
No
11908
撮影年月
2020年6月
投稿日
2021年05月16日
更新日
2023年08月22日
撮影場所
恵比寿 / 東京
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
RICOH GR III