メキシコシティにある国立人類学博物館で目の前に突如として現れるのが、あまりに巨大な石の頭である。表情は無愛想とも滑稽ともつかず、訪れる者を値踏みするかのように睨み返してくる。これらは紀元前1200年頃から紀元前後にかけてメソアメリカで栄えたオルメカ人によって作られたもので、考古学者たちは「オルメカ巨石人頭」と呼んでいる。だが、なぜ彼らがこれほど大きな人頭を彫刻したのかについては今なお定説がなく、宗教的儀礼の道具だとか、支配者の権威を誇示する肖像だとか、果ては遊戯のトロフィー説まで諸説入り乱れている。用途不明のまま博物館に鎮座しているのは、古代の人類学的な謎がいかに厄介かを如実に示している。
石像の特徴的な顔立ちは、厚い唇に潰れたような鼻、そして大きく見開かれた目である。現代のメキシコ人とは異なる印象を受け、アフリカ的な要素を思わせるが、オルメカ人が本当にどこからやって来たのかは未解明だ。考古学的な資料では、彼らがメソアメリカ初期文明の基盤を築いたことは確かとされるが、DNAの残骸などは見つかっていないため、想像するしかない。まるで石頭自体が「知りたければ自分で掘ってみろ」と言っているかのようだ。
ちなみにこの巨石、重さは数十トンに達するものもあり、出土地からどうやって運ばれたのかもまた謎とされている。大都会メキシコシティの交通渋滞を思えば、紀元前の人々の輸送技術がいかに現代人泣かせであるか容易に想像できる。結局、オルメカ人の頭像は、学者を悩ませるためにわざわざ残された石の冗談ではないかと思えてくる。
2010年11月 メキシコ 静物 | |
頭 口唇 メキシコシティ 博物館・美術館 鼻 石 |
No
4864
撮影年月
2010年6月
投稿日
2010年11月20日
更新日
2025年08月29日
撮影場所
メキシコシティ / メキシコ
ジャンル
静物写真
カメラ
RICOH GR DIGITAL