ミトーの川辺に設けられた木の板張りの路地を歩いていると、湿った風に混じって人の声が響いてきた。その声をたどっていくと、編笠をかぶった女性たちがずらりと並び、魚と格闘している光景に出くわした。ここは市場の一角にある水揚げ場のようで、床の上には銀色に光る魚が山のように積み上げられている。ベトナムのミトーはメコン川の支流に抱かれた町で、魚の豊かさはその川の恵みそのものだ。
女性たちは器用にハサミを使って魚の腹を切り開き、わたを取り出していた。まな板も使わず、素手とハサミだけで作業を進める手際は、家庭料理の延長のようでありながら、同時に生業の厳しさをも物語っていた。僕の姿に気づいた彼女たちは一瞬驚いた様子を見せたが、すぐに笑顔を取り戻した。観光客に構っている暇などないのか、それとも異邦人の存在を面白がっているのか、笑いながらも手を止めることはなかった。
2009年7月 人びと ベトナム | |
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No
2979
撮影年月
2009年3月
投稿日
2009年07月15日
更新日
2025年09月10日
撮影場所
ミトー / ベトナム
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM