パタンの旧市街を歩いていたとき、路地裏の小さな小屋の中に機織り機の音が響いていた。軋むような低い音が、木造の梁と土壁に吸い込まれていく。近づいて覗きこむと、一本一本の糸がきれいに張られた織機の向こうに、ひとりの女性がいた。
カメラを向けると、彼女はふと顔を上げて、縦糸の隙間から静かにこちらを見た。そのまなざしには、作業を邪魔された苛立ちもなければ、過剰な笑顔もなかった。ただ、織りの途中に現れた、ひとつの視線の交差だった。
縦糸と横糸を交差させて布を織っていくという行為は、国や文化を問わず、どこか根源的な手仕事として人の記憶に刻まれているのかもしれない。タイでも、インドでも、そしてネパールでも、織機の仕組みは少しずつ違って見えるけれど、その根底にある「織る」という行為はどこかで共通している。
2009年12月 ネパール 人びと | |
職人 パタン 糸 織工 |
No
3480
撮影年月
2009年6月
投稿日
2009年12月12日
更新日
2025年06月17日
撮影場所
パタン / ネパール
ジャンル
ポートレイト写真
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM