ヤンゴンの雑踏の中で出会ったひとりの勝ち気な女の子。カメラを向けると、多くの女性が見せるような恥じらいや照れ笑いは一切なく、むしろ挑戦するかのような視線を返してきた。まるで「撮りたいなら撮ればいい」とでも言いたげで、こちらが試されている気分になる。インドやバングラデシュでも似た経験はあったが、ミャンマーのヤンゴンでは彼女のように負けん気を纏った少女に出会うことは滅多にない。どうも私は写真を撮りに来ているのか、それとも写真に撮られる覚悟を試されているのか分からなくなる。
彼女の頬には白いタナカが塗られていた。ミャンマー特有の化粧であり、日焼け止めや虫よけの役割を果たすとされるが、実際には単なる習慣や装いの一部になっていることも多い。日本でいえば日焼け止めクリームとおしろいが合体したようなもので、見慣れない旅行者には少々不思議に映る。だが、ヤンゴンの市場や通りを歩けば、幼い子どもから大人まで誰もが当たり前のように顔に塗っている。勝ち気な女の子もまた、その文化を体現している一人に過ぎない。タナカを塗っているからといって、性格まで強気になるわけではないのだろうが、彼女の視線には確かに何か揺るぎない芯があった。私が考えているよりもずっと、こちらの方が弱腰に見えてしまうのかもしれない。
2010年8月 ミャンマー 人びと | |
顔 女の子 タナカ ヤンゴン |
No
4403
撮影年月
2010年3月
投稿日
2010年08月01日
更新日
2025年09月10日
撮影場所
ヤンゴン / ミャンマー
ジャンル
ポートレイト写真
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM