インド洋の真珠などと世間から持ち上げられるスリランカの最大の都市コロンボで、やたらと活気のある魚市場に迷い込んでいた。むせ返るような生臭さと、飛び交う威勢のいい怒声にすっかり圧倒される。よそ者が長居するような場所ではない。早々に立ち去ろうとしたそんな騒々しい市場の片隅で、僕は妙な格好をして働く男を見かけた。
その妙な格好をして働く男は、なぜかサッカーのオランダ代表のユニフォームを着ていた。スリランカはかつてオランダ東インド会社の支配下にあった歴史を持つため、その名残で親近感でもあるのだろうか。いや、単に支援物資や古着の横流し品を適当に着ているだけというのが事の真相だろう。彼がヨハン・クライフの提唱したトータルフットボールの熱烈な信奉者である可能性は、限りなく低い。
その可能性が限りなく低いユニフォーム姿の男は、僕が首から提げている無骨な一眼レフカメラを目ざとく見つけた。すると彼は、傍らにあった大きな魚の尻尾を掴み、まるで優勝トロフィーか何かのように高々と掲げてポーズをとってくれたのだ。もちろん、彼は市場で立ち働いているただの労働者に過ぎない。実際にこの立派な魚を荒波から釣り上げたのは、間違いなくこの男ではないのだ。
| 2008年5月 人びと スリランカ | |
| 髭 コロンボ 魚 魚市場 サッカーのユニフォーム |
No
1692
撮影年月
2008年3月
投稿日
2008年05月24日
更新日
2026年05月15日
撮影場所
コロンボ / スリランカ
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM