インド最大の都市であるムンバイの埃っぽい通りを歩いていた。ふと喉が渇いても、ここには気の利いたコンビニエンスストアなどというものは存在しないようだ。少なくとも、僕が街をうろついている間に、あの見慣れた明るい看板を目にすることは一度もなかった。その代わりと言っては何だが、道端のあちこちに小さな箱のようなキオスクがへばりついている。現地の人々にとっての、ささやかな雑貨店の役割を果たしているらしい。
そのささやかな雑貨店の暗い軒下を覗き込んでみる。一畳にも満たないような狭い店舗の中には、煙草やスナック菓子など、細々としたものが所狭しと並べられていた。とりわけ目につくのは、小袋に入ったグトゥカーの山だ。グトゥカーというのは、細かく砕いたビンロウジュの実や石灰、香料などを混ぜ合わせた噛みタバコの一種である。口の中を真っ赤に染め、ひどい健康被害をもたらすとして州によっては製造や販売が禁止されているという雑学を耳にしたことがある。だが、ここではそんな法律などどこ吹く風とばかりに、堂々と店頭の特等席を占拠している。
その堂々と店頭を占拠している雑多な商品群を見ていると、その陳列の仕方に妙な感心を覚える。まるで日本の駅で営業しているキオスクのように、限られた空間の上下左右を無駄なく使い切っているのだ。その見事な箱庭のような空間の真ん中に、店主と思しき男が退屈そうに座っている。彼が一日中この狭い箱の中でどうやって用を足しているのかという、ひどく現実的で身も蓋もない疑問を持て余したまま、僕は無言でその場を立ち去った。
| 2024年10月 町角 インド | |
| バック・ショット キオスク ムンバイ |
No
12683
撮影年月
2024年5月
投稿日
2024年10月29日
更新日
2026年05月01日
撮影場所
ムンバイ / インド
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R V
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF