今なおインドの小売市場の約9割は、伝統的な零細店舗が占めているという。そこに含まれるのは、日本で見かけるようなコンビニエンスストアではない。むしろ「店舗」と呼ぶにはあまりにも素朴な、小さな露店や簡素な屋台がほとんどだ。
写真の男が働いていたのも、まさにそんな店のひとつ。屋根も壁もなく、店舗というよりはむしろ道端に出された屋台に近い。それでも、この場所は間違いなく彼の「店」なのだ。小さな木箱の上に整然と並べられた品々は、どれも生活の一部に根ざしたもの。特に、キンマの葉を使ったパーンを売っているのが目を引く。
パーンは、キンマの葉に香辛料や甘味料を包み、噛んで楽しむ伝統的な嗜好品だ。道行く人々が足を止め、軽く会話を交わしながらひと包み買っていく。その光景は、ムンバイのような大都会であっても変わらない。煌びやかなショッピングモールが増えても、こうした零細店舗は今なお街のいたるところで営業を続け、人々の日常の中に溶け込んでいる。
屋根のない屋台で働く男は、そんな都市の片隅にしっかりと根を下ろし、今日もまた客を迎えているのだった。
2025年3月 インド 人びと | |
キンマ キオスク 男性 ムンバイ 裸足 |
No
12840
撮影年月
2024年5月
投稿日
2025年03月16日
更新日
2025年03月17日
撮影場所
ムンバイ / インド
ジャンル
ポートレイト写真
カメラ
SONY ALPHA 7R V
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF