男の子がバイクの上に肘を突きながら振り返った

振り返る男の子
振り返る男の子

インド西部の都市、アウランガバードの旧市街には、細い路地が無数に走っている。昼下がりの光が白い壁を照らし、そこに乾いた影を落としていた。その路地の一角に、ひとりの男の子が立っていた。大きなリュックサックを背負い、制服のシャツの裾が少しはみ出している。たぶん学校の帰りなのだろう。近くに停められた古びたバイクにもたれかかりながら、誰かを待っている様子だった。

僕に気づくと、男の子はわずかに顔をこちらへ向けた。その目つきがなんとも言えない。警戒しているようでもあり、興味を持っているようでもある。口元にはいたずらっぽい笑みが浮かんでいた。奥のほうから、白い服を着た男性がふたり、笑いながらこちらへ歩いてくる。どうやら近所の人らしい。このあたりでは、見知らぬ外国人がカメラを構えていても、誰も驚かない。代わりに「撮るならうちの子も」と言い出す人が多い。

アウランガバードは、かつてムガル帝国の都でもあった歴史ある町だが、そんな過去の栄華を感じさせるものはこの路地にはない。埃っぽい空気と錆びたバイクの匂い、それがいまの現実だ。だが、少年の背中に揺れる水筒や、笑い声の混じった午後の光景には、どこか未来の兆しのようなものがあった。もっとも、彼が未来のことなど考えているようには見えない。たぶん、ただお腹がすいて家に帰りたいだけなのだろう。

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ENGLISH
2011年6月 インド 人びと
アウランガバード バックパック 男の子 振り返る ペットボトル

PHOTO DATA

No

5540

撮影年月

2010年9月

投稿日

2011年06月26日

更新日

2025年10月27日

撮影場所

アウランガバード / インド

ジャンル

ストリート・フォトグラフィー

カメラ

CANON EOS 1V

レンズ

EF85MM F1.2L II USM

日本国外で撮影した写真

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