ベルハンポルの町を歩いていると、通りの片隅にサイクルリクシャーが一台、停まっていた。運転席ではなく、客席側に腰かけていたのはリクシャワラーの男だった。
彼は片膝を立て、足を大きく組んで座っていた。身体を包むその仕草には、仕事の合間のごく自然な寛ぎがあった。車体は少しくたびれていたけれど、その座席は男の居場所としてすっかり馴染んでいるようだった。
カメラを向けると、男はこちらを見て、ふっと笑った。威圧感のない、どこか照れくさそうな、けれど誠実な笑顔だった。その表情が、町の喧騒からわずかに離れたこの一角の空気を、より穏やかなものに変えていた。
ふと視線を下ろすと、男が穿いているのはルンギではなかった。代わりに、ジャージのような伸縮性のあるズボンを穿いていた。インドではあまり見かけないスタイルだが、不思議と彼の雰囲気にはよく合っていた。もしかすると、動きやすさを優先したのかもしれないし、ただの偶然かもしれない。
いずれにせよ、そのちぐはぐさが逆に、彼の存在をより人間味あるものに感じさせた。旅先では、こんな風に「ちょっと違う」というだけで、誰かの印象が強く心に残ることがある。
2012年10月 インド 人びと | |
ベルハンポル 客待ち リラックス リクシャワラー 笑顔 |
No
6865
撮影年月
2011年6月
投稿日
2012年10月04日
更新日
2025年06月14日
撮影場所
ベルハンポル / インド
ジャンル
ポートレイト写真
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM