東京の駒込にある六義園の中央、池の縁をなぞるように小径を歩いていると、また橋のある場所へ出た。園内にはいくつも橋が架かっているが、ここは千鳥橋という名らしい。名前の由来を深く考えると、千鳥は飛び、橋は動かない。いずれにせよ、僕は橋そのものより、橋の上を行き交う人びとを眺めたくて、少し距離を置いた場所に立った。
橋の上では大勢の人が立ち止まり、池を覗き込んでいる。逆光のため、橋も人びとも、そして周囲の木々までもが一様にシルエットになっていた。輪郭だけがくっきりと浮かび、細部は意地悪なほど省略されている。人の姿はしばしば情報過多だが、影になると急に分別がよくなる。
彼らの視線の先には、池の水面がある。おそらく橋の下では鯉が悠々と泳いでいるのだろう。六義園の池にいる鯉は、代々この景色を見慣れているはずで、人が覗き込もうが、カメラを構えようが、特別な反応は示さない。むしろ、見られているのは人間のほうで、鯉は水面越しに「今日もずいぶん多いな」と数えているのかもしれない。
| 2007年10月 人びと 東京 | |
| 橋 庭園 駒込 六義園 シルエット |
No
1152
撮影年月
2007年9月
投稿日
2007年10月19日
更新日
2025年12月22日
撮影場所
駒込 / 東京
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
CANON EOS 1V