玄関先に、ひとりの女の子が立っていた。腕には幼い妹をしっかりと抱えている。ここはインド東部、ベルハンポルの住宅街で、通りから一歩入ると人の気配が急に濃くなる。赤ん坊の眉間には小さな黒い点、ビンディがあり、目の周りは不釣り合いなほど黒く縁取られていた。ずいぶん派手なアイラインだが、これはカージャルと呼ばれるもので、邪視から子どもを守るためのものだという。化粧というよりは、お守りに近い。
カージャルは古くから南アジア一帯で使われてきたらしく、煤や植物油を混ぜて作るのが伝統的だそうだ。医学的な根拠があるかどうかはともかく、信じるか信じないかよりも、信じて使い続けられているという事実のほうが、この土地では重要らしい。文化とは概してそういうもので、合理性の有無は二の次にされる。
カメラを向けると、女の子は口紅を引いた唇をきゅっと結び、少し背筋を伸ばして赤ん坊を抱き直した。年齢のわりに妙に堂々としている。おそらく、こうして妹を抱くことが日常なのだろう。一方で赤ん坊のほうは、何が起きているのかまるで分からない様子で、黒く縁取られた大きな目をこちらに向けたまま、きょとんとしていた。その視線には警戒も好奇心もなく、ただ状況を処理しきれない困惑だけが浮かんでいる。
| 2012年2月 インド 人びと | |
| 赤ちゃん ベルハンポル ビンディ アイライナー 女の子 カージャル メーキャップ |
No
6185
撮影年月
2011年7月
投稿日
2012年02月21日
更新日
2025年12月20日
撮影場所
ベルハンポル / インド
ジャンル
ポートレイト写真
カメラ
OLYMPUS PEN E-P2
レンズ
M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42MM