ミャンマーの旧都ヤンゴンの街角では、天秤棒をそのまま地面に置き、即席の店として商品を売っている人をよく見かける。露店といっても看板があるわけではなく、天秤棒と籠があれば、それで立派な商売が成立してしまうあたりが実に簡潔だ。写真の男の子も、そうした売り手の一人で、バナナを扱っていた。籠には天秤棒に引っ掛けるための金属の輪が取り付けられており、運ぶことと売ることが最初から同時に考えられている。商売とは、かくも移動と不可分なものだったかと、妙な感心をしてしまう。
天秤棒にぶら下げられたバナナの房は思いのほか多く、籠の中だけでは収まりきらないらしい。東南アジアの市場では、熟れ具合を見ながら売るのが肝心で、日を跨げば商品価値が一気に下がる。バナナは足が早い。日本では「叩き売り」などと言うが、こちらでは叩く前に時間に追い立てられる。天秤棒を担げば、そのまま場所を変えられるのだから、売れ行きが悪ければ移動すればよい。その身軽さが、この商いの最大の武器なのだろう。
男の子は天秤棒に手を載せ、眉間に皺を寄せている。どうすれば売り切れるか、あるいは次にどこへ行くべきかを考えているようにも見える。もっとも、こちらが勝手に深読みしているだけで、実際には今日の夕飯のことか、明日の天気のことかもしれないけれど。
| 2010年7月 ミャンマー 人びと | |
| バナナ 男の子 露天商 考える ヤンゴン 天秤棒 |
No
4379
撮影年月
2010年2月
投稿日
2010年07月26日
更新日
2025年12月12日
撮影場所
ヤンゴン / ミャンマー
ジャンル
スナップ写真
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM