バングラデシュの地方都市、マイメンシンの繁華街を歩いていると、ひとりの男の子が店先に立っていた。まだ七、八歳くらいだろうか。小さな体に大きな瞳、そして妙に整った眉毛が印象的だった。僕がカメラを向けると、男の子は一瞬こちらを見てから、照れくさそうに視線を落とした。どうやら、見知らぬ外国人の登場に少し戸惑っているようだった。
マイメンシンは、バングラデシュの中でも穏やかな町だ。中心部には古い商店が並び、道路にはリキシャが行き交う。クラクションの音が絶え間なく響くが、不思議と苛立ちは感じられない。街の空気がのんびりしているのだ。男の子が立っていた店のショーケースには、古い携帯電話や時計が並んでいた。修理屋なのか、骨董屋なのか、判然としない。どちらにしても、時代の残り香を商う場所らしい。
男の子の顔には、どこか思索的な影があった。子どもにしては大人びた表情で、ふとした瞬間に口元が動く。何かを言いたいのか、あるいは言葉を飲み込んだのか。南アジアの男の子たちは総じて眉毛が濃く、まつげが長い。これは遺伝的な特徴でもあるが、実際に現地の人々は「長いまつげは悪いものを遠ざける」と信じているという。そんな迷信めいた話を思い出しながら、僕はシャッターを切った。
| 2010年4月 バングラデシュ 人びと | |
| 男の子 伏し目 睫毛 マイメンシン |
No
3937
撮影年月
2009年9月
投稿日
2010年04月10日
更新日
2025年10月23日
撮影場所
マイメンシン / バングラデシュ
ジャンル
ポートレイト写真
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM