目の前に巨大なモスクがそびえていた。イスタンブールに建つ通称ブルーモスクと呼ばれるスルタンアフメト・モスクだ。ブルーモスクというからその外観は青いものだと思っていたので、すぐ近くに立っていても、目の前にある巨大な建造物が有名なブルーモスクだと理解するのに時間がかかってしまった。外観は全く青くない。青いモスクと呼ばれるのは、内装がイズニク製の青い装飾タイルで彩られているからで、中に足を踏み入れるまではその青さを体感することはできない仕組みなのだ。
この巨大な建造物はオスマン帝国の第14代スルタン・アフメト1世が7年もの年月をかけて建設したもので「イスタンブール歴史地区」の一部として世界遺産にも登録されている。イスタンブール観光の目玉のひとつだ。夕暮れ時に近くから眺めていると、空に向かってとんがったミナレットが巨大なモスクをまるでミニチュアのように見せていた。
ミナレットと呼ばれる尖塔はモスクで礼拝が始まるのを近隣へ知らせるためのものだ。今ではミナレットの上部に取り付けたスピーカーから流すのが一般的だけれど、かつては人間がミナレットの上から声で呼びかけていた。どうしてキリスト教の教会や日本のお寺のように鐘を鳴らして情報を伝えるという発想には至らなかったのだろう。ちょっと不思議だ。
トルコを旅していると、小さなモスクには1本のミナレットが建っていて、規模が大きくなるにつれ本数が増えていくことに気がつく。どうやらこの国ではミナレットの本数がそのモスクの格(モスクに格なんてあるのだろうか?)を表していると考えられているようだ。ちなみにこのブルーモスクには6本のミナレットが建っていて、トルコでは一番多い。つまりこのモスクはトルコでは最も格の高いモスクであることを意味している。6本というのはイスラム教の聖地であるメッカにあるカーバ神殿と同じ数なのだそうだ。
しかしながら、ミナレットの数が格を表すというのはトルコだけのような気がする。他のイスラム圏でそのような考え方はしていないように見受ける。インドネシアのジャカルタにあるイスティクラルというモスクは世界で3番目の規模を誇る巨大なモスクだけれど、ミナレットは1本しか建っていない。モスクの人に尋ねたら、「我々イスラム教徒はひとつの共同体だからミナレットもひとつで十分」という答えが返ってきた。同じイスラム圏でも考え方は複数あるようだ。
2005年11月 建築 トルコ | |
イスタンブール ミナレット モスク 世界遺産 |
No
232
撮影年月
2001年1月
投稿日
2005年11月09日
更新日
2023年10月05日
撮影場所
イスタンブール / トルコ
ジャンル
建築写真
カメラ
CANON EOS KISS