ムンバイの商店街を歩いていると、一軒のアイロンがけ専門の店が目に入った。古びた看板の下、年季の入ったアイロンが壁際に無造作に並べられている。その光景はどこか懐かしく、そして興味を引いた。
インドは更紗発祥の地。昔から木綿の衣服を愛用する文化が根付いているせいか、街角ではアイロンかけ職人をよく見かける。かつては熱した木炭を入れる鉄製の炭火アイロンが主流だったが、さすがに今では電気アイロンが使われているようだ。
しかし、一つ気になったのは「洗濯をする人」の姿がほとんど見当たらないことだ。アイロンがけをする人がいるのなら、その前段階として洗濯を請け負う人もいてもよさそうなものなのに、ここではあまり見かけない。それもそのはず、ここはヒンドゥー教の世界。ジャーティ(カースト)の概念が根強く残るインドでは、洗濯をする人とアイロンがけをする人の仕事は厳密に区別されているのだろう。
もし洗濯とアイロンが一つの店で完結するサービスがあれば、さぞ便利だろうと思う。だが、何世代にもわたって受け継がれてきた仕事の分業は、たとえ合理的でなくとも、簡単には変わらない。ムンバイの喧騒の中で、アイロンかけ職人たちは今日も黙々とシワを伸ばし続けているのだった。
2025年3月 インド 人びと | |
アイロン ムンバイ ピアス アイロンかけ職人 タンクトップ |
No
12842
撮影年月
2024年5月
投稿日
2025年03月18日
撮影場所
ムンバイ / インド
ジャンル
ポートレイト写真
カメラ
SONY ALPHA 7R V
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF