バンコクの中心部、BTSサイアム駅周辺には、これでもかというほどショッピングモールが密集している。観光客はどれに入っても似たような気がして、結局どれがどれだかわからなくなる。地元の人は、あのモールにはこれがあって、こっちのモールにはそれがないと、細やかな違いを語り分けるらしいが、僕にはどれも同じ空調の効いた巨大な箱に見えてしまう。
そのなかでもひときわ有名なのが、駅前にそびえるサイアム・パラゴンだ。ここにはブランドショップから映画館、水族館まで、なんでも詰め込まれている。内部は広大で、冷房の効きすぎた空気が肌にまとわりつく。床は磨き上げられ、天井はどこまでも高い。そこにいる人々は、みな洗練されていて、うっかりしていると東京の表参道あたりに迷い込んだような錯覚すら覚える。
もっとも、この「錯覚」はもはや錯覚ではないのかもしれない。タイの経済成長は著しく、所得格差も縮まった。かつて「微笑みの国」と呼ばれたこの国の笑顔は、今や購買力の象徴でもある。日本が「失われた30年」とやらで自信を削っているうちに、アジアの経済地図は静かに塗り替えられていた。
| 2020年1月 町角 タイ | |
| バンコク カフェ エスカレータ ショッピング・モール |
No
11380
撮影年月
2019年9月
投稿日
2020年01月30日
更新日
2025年12月11日
撮影場所
バンコク / タイ
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
RICOH GR III