BTSのサイアム駅の周辺には幾つも大きなショッピングモールが建っている。どれに行こうか迷ってしまうくらいだ。旅行者である人間には、ショッピングモールごとの違いがよくわからない。地元の人には、こちらのショッピングモールにはあれがあって、こちらのショッピングモールにはあれがないなど、色々な違いが分かるのだろうけれど、僕にはどれもこれも同じようなショッピングモールに見えてしまうのだ。そのような状況の中で、僕が訪れることにしたのはサイアム駅の目の前にあるサイアム・パラゴンだった。
サイアム・パラゴンの中には多くのお店が入っていて賑わっていた。どのお店も小洒落た店構えをしていて、ここをウロウロと歩いてもアジア的なゴチャゴチャさは微塵も感じられない。東京にあるショッピングモールとほとんど変わらないように見えてしまう。その一因は日本経済の不調にあるのだと思う。日本とタイの所得格差は以前よりもずっと小さくなっているのだ。日本が失われた20年なんて言っている間にタイの経済は着実に成長したのだろう。もはや日本はアジアで一番豊かな国ではないのだ。
シャムと言葉を聞くとシャム猫だとかシャム双生児だとかなんだかちょっと得体のしれないものをイメージしてしまう一方で、サイアムと聞くとバンコク中心部を想像してしまう。連想するイメージは全く異なるけれど、シャムとサイアムは実は同じ単語だ。英語ではどちらもSiamと書く。
タイの正式名称は1939年まではシャムと言った。シャムという言葉は古く、パーリ語の「黄金の国」、サンスクリット語の「闇」、もしくはモン族の言葉の「異邦人」に由来しているというけれど正確なところはわからない。いずれにせよ、この辺りの場所は古くからよその人からシャムと呼ばれていたのだろう。
中国の人がこの辺りをシャンと読んでいたのを、ポルトガル人がシャムと西洋に紹介したため、ヨーロッパでは長いことシャムと呼ばれることとなったのだそうだ。
ちなみにミャンマーの少数民族であるシャン族のシャンもシャムと同じ意味だ。彼らはタイ族なのだ。
No
11380
撮影年月
2019年9月
投稿日
2020年01月30日
撮影場所
バンコク / タイ
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
RICOH GR III