スリランカの首都コロンボにある旧市街、ペターの通りは、朝から人と車と声であふれていた。道幅はそれほど広くないが、そこに屋台とリヤカーとオート三輪が無理やり押し込まれている。店先には香辛料の袋や衣料品の山が積まれ、風が吹けばカレーの匂いと埃が混ざって舞い上がる。通りを歩くだけで、一食分のスパイスを吸い込んだ気分になる。
その混沌の中で、坊主頭の男が一人、店の影に立っていた。片手にタバコ、もう一方の手にはガラスのコップ。中身はたぶんアイスティーか、あるいはスリランカ特有の甘ったるいミルクティーだろう。こちらがカメラを向けると、男は顔を向けもせずに親指を立ててみせた。親指と人差し指の間には、白く細い煙が上がっている。どうやら、シャッター代わりに煙草を一服というわけだ。
ペターは、かつてアラブ商人たちが行き交った交易の拠点で、時間が止まったように古い。電線は蜘蛛の巣のように絡まり、歩道は市場の延長になっている。だが、誰も不便そうにはしていない。渋滞も混乱も、ここでは日常の呼吸のようなものだ。
| 2008年7月 町角 スリランカ | |
| 煙草 コロンボ コップ 坊主頭 サムアップ |
No
1769
撮影年月
2008年3月
投稿日
2008年07月01日
更新日
2025年11月28日
撮影場所
コロンボ / スリランカ
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM