ソウルの中心にある明洞(ミョンドン)は、いつ訪れても人が多い。東京でいえば原宿か渋谷の中間のような場所で、流行の発信地として知られている。通りにはコスメショップ、カフェ、屋台など、欲望のジャンルが雑多に並んでいる。看板にはハングルの間にカタカナや英語が混じり合い、まるで文字そのものが観光客を歓迎しているようだ。
通りを歩く人びとは皆、どこかしら小ぎれいである。韓国の若者はファッションへの意識が高く、男女問わず髪型が整っている。僕などが混じると、まるでモノクロ写真の中にだけ昭和が残っているような気分になる。そんな中で、一組のカップルが目に入った。二人は自然に手を繋ぎ、肩を寄せ合いながら歩いていた。女性が指さした方向を、男性が少し困ったような顔で眺めている。どうやら目的地を探しているらしい。
明洞では、人の波に飲まれて歩くことさえ一苦労だ。それでも二人は離れない。まるで人混みの圧力に抵抗するように、互いの手を確かめ合っている。その姿がどこか儀式めいて見えるのは、観察者のひねくれた目のせいだろう。
ふと見上げると、ビルの上に「ノレバン(カラオケ)」の看板があった。日本語で「カラオケ」と書かれているが、ここでは恋人たちが二人きりで歌う小部屋を指す。恋と音楽とネオンが渦を巻く街、それがソウル・明洞である。
| 2008年11月 町角 韓国 | |
| カップル 指差し ソウル 看板 |
No
2165
撮影年月
2008年7月
投稿日
2008年11月01日
更新日
2025年11月07日
撮影場所
ソウル / 韓国
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF24MM F1.4L USM