バングラデシュ最大の都市ダッカ。喧騒と雑踏が絡みあうこの街の幹線道路は、例外なく騒がしい。クラクションの音がひっきりなしに鳴り響き、熱気と埃がアスファルトの上を舞い続ける。
しかし、その喧騒の中で、真に耳に残るのは、自動車のエンジン音ではない。しゃり、しゃり、と回るペダルの音、そしてリクシャーの運転手たちが力強く鳴らすベルの音。それらが交差点にこだまし、どこまでも続いていく。
日本で言えば、車道を走るのは当然ながら車とバスだろう。だが、ここダッカでは、サイクルリクシャーが列をなして自動車と肩を並べて走っている。いや、むしろ自動車よりも多く、堂々とした存在感で車道を占めている。艶やかな装飾を施されたその車体が、陽の光に反射して街の色彩をより鮮やかに見せていた。
ふと、中央分離帯に目をやる。細身の青年が一本のポールに手をかけ、車の波をじっと見つめていた。何を考えているのかは分からない。リクシャーの列を追っているのか、あるいはこの先に続く自分の道を見つめているのか。その立ち姿は、不思議なほど静かだった。
2014年10月 バングラデシュ 人びと | |
サイクルリクシャー ダッカ 往来 青年 |
No
8829
撮影年月
2009年9月
投稿日
2014年10月12日
更新日
2025年06月24日
撮影場所
ダッカ / バングラデシュ
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM