ルアンパバーンの中心から渡し舟でメコン川を越えると、対岸にはシエンメンという小さな集落がある。舗装もまばらな道の両側には木造の家が点在し、牛がのんびりと通せんぼをしている。観光地とは思えない静けさで、昼下がりの空気には少し埃っぽい甘さが混じっていた。
その道端に、ひとりの女の子が腰を下ろしていた。制服のシャツは少し汚れていて、ランドセルの紐が片方だけ肩から落ちている。頬杖をついたまま、じっと遠くを見つめていた。どう見ても不機嫌そうな顔つきである。友達と喧嘩でもしたのだろうか。いや、もしかしたら宿題を忘れたのかもしれない。理由はどうあれ、その表情は「世界なんて知ったことか」という年齢不相応の達観をたたえていた。
僕がカメラを構えても、彼女はこちらを見ようとしなかった。カメラが嫌いというより、興味そのものがないのだろう。背景には自転車が立てかけられ、光の粒が葉の隙間からこぼれている。そんな風景の中で、女の子の横顔だけがやけにくっきりと浮かび上がっていた。
| 2008年5月 ラオス 人びと | |
| しかめっ面 女の子 ルアンパバーン 喧嘩 不機嫌 |
No
1635
撮影年月
2008年1月
投稿日
2008年05月04日
更新日
2025年11月23日
撮影場所
ルアンパバーン / ラオス
ジャンル
ポートレイト写真
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM