スリランカの古都、キャンディの道端で、一人の女子学生が軒先に立っていた。真新しい制服に身を包み、胸の前で教科書を抱え、どこか所在なげに道路の先を見つめている。急に小雨が降り出したのだろう。彼女は濡れまいと、古びた瓦屋根の下に避難しているようだった。白いブラウス、白いスカート、白い靴下、そして白いスニーカー。すべてが眩しいほどの白で統一されており、南国の曇り空の下ではかえって浮かび上がるように見えた。
胸元にはレジメンタルストライプのネクタイがきっちりと結ばれている。おそらく学校指定のものだろう。スリランカの学校では、イギリス統治時代の名残から制服文化が今も根強く残っていると聞いた。特に女子の制服は白であることが多く、清潔と誠実を象徴しているという。だが、実際のところはどうなのだろう。彼女の表情を見る限り、清潔さや誠実さよりも、退屈と不安の方が勝っているように見えた。
バスはなかなかやってこない。南国のバス停には時刻表というものが存在していないことが多い。来るときは来るし、来ないときは来ない。そう割り切るしかないのだ。女子学生は腕を組み、足元の泥を気にしながら、雨の止む気配をうかがっていた。その背後の瓦屋根は、ところどころ崩れていて、今にも落ちてきそうだったが、彼女はそんなことには頓着しない様子だった。
| 2008年8月 人びと スリランカ | |
| バス 軒先 キャンディ 女子学生 ネクタイ 制服 |
No
1917
撮影年月
2008年3月
投稿日
2008年08月20日
更新日
2025年11月06日
撮影場所
キャンディ / スリランカ
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM